山とこどもの写真。狙って撮るより、そっと「すくう」ように残すこと
2026.06.22
私たち「山とこども」は、夫婦のユニットとして活動しています。文章は妻が、写真は夫が担当。
写真を撮るとき、大切にしていることがあります。
子どもや、山で過ごす時間を、作り込むのではなく、そのまま残すこと。
ポーズを決めた写真や、絶景のような特別な瞬間だけではなく、その日の空気、子どもの自然な動きを写し取ること。

夫が写真を撮るところを見ていると、娘に「ここに立って」とお願いすることはありません。
いつ撮ったのか不思議なくらい、ただ一緒に歩いて、いつの間にかシャッターを切っています。


「子どもは大自然」という言葉
そんな写真との向き合い方を、あらためて考えるきっかけになった本があります。
山をテーマに作品を撮り続ける写真家・野川かさねさんと、編集者・小林百合子さんによる『山の時刻(とき)』。

お二人が作られる本が大好きで、これまで出版された本も何冊も持っています。
今回は、その刊行記念イベントが下北沢の本屋B&Bで開催されたので参加してきました。
トークセッションが始まる前、会場には野川さんの写真のスライドショーが流れていました。
言葉はなく、写真とピアノの曲だけが続いていく時間。始まる前から、もう少し胸を掴まれてしまって、これはいい時間でした。
トークセッションでは山の時間についての捉え方を話してくださいました。
そこで子育ての大変さの話になったとき、小林さんがふと「子どもって大自然だもんね」と言われたのが、とても印象に残っています。
説明しすぎない、でも妙にしっくりくる言葉で、思わずうなずいてしまいました。
でも、その予測できなさこそが、おもしろい。
私たちが「山とこども」という名前をつけた理由にも、どこか通じるものがある気がしました。


写真を「すくう」ということ
また、野川さんが、写真を撮ることを「すくう」と表現されていたのも印象に残っています。
狙って撮る、というより、そこにあるものをそっと受け取る感じ。
その言葉どおり、野川さんご本人もとても自然体で、写真との関係性がそのまま表れているように感じました。
『山の時刻』は、野川さんの余白のある写真に、小林さんの端正な文章が添えられていて、その組み合わせが本当に素敵です。
驚いたのは、小林さんは写真が「いつ・どの山で撮られたか」という情報をあえて見ずに、タイトルと文章を書かれたとのことでした。
写真と文章の間を何度も行ったり来たりしながら、自分の時間や記憶を重ねられるのがいいなと思いました。
山を「過ごす」ということ
数年前、私は野川さんのフォトトレッキングイベントに参加して、八重山に登ったことがあります。
そのときは、頂上を目指して急ぐのではなく、風景を楽しみながら、ゆっくり登る時間でした。
山に「登る」ことよりも、「過ごす」ことの面白さを初めて体感したように思います。
今回のトークイベントでも、また新しい山の時間の楽しみ方を教えてもらった気がしました。
写真や言葉を通して、山と出会い直すこと。立ち止まって、すくうように時間を感じること。
そんな感覚を、これからも大事にしていきたいです。


憧れの背中を追いかけて
私たち「山とこども」は、ブログで子連れ登山や日々の記録を発信していますが、今、webの世界から飛び出し「本を作る」という新しい挑戦をしています。
初めて制作したZINE『いつもの山』では、子どもと一緒に歩く、いつもの、けれど二度と同じ瞬間はない山の景色を詰め込みました。

一冊の形にまとめようと試行錯誤した今だからこそ、お二人が5年という歳月をかけてこの作品を作り上げたことのすごさがより感じられました。
憧れのお二人の背中を追いかけながら、これからの活動への勇気をもらえた夜でした。
私たちも、山で過ごした時間や、子どもの一瞬を、写真と言葉で切り取り、残していきたいと思っています。

【あわせて読みたい】
▽ FUJIFILM X-E3レビュー|最新X-E5ではなく、あえて中古を選んだ理由

▽ 家庭用プリンターで印刷した写真が「エプソンフォトグランプリ作品展」に入選しました

▽ 「OM-5」アンバサダー活動記。写真展や雑誌『ランドネ』『PEAKS』の広告に写真が掲載されるまで

▽ 「山とこども」ZINEの作り方。印刷会社選びからソフト、フォントまでこだわった制作記










